読書だけじゃない。これから起こる事や、やる事全てが僕にとっては人生最後となるものばかりだ。

 “人生最後”のそれら全てを噛み締めて、僕は終活をやり遂げるのだ。

 それからやや感傷的になったりもしたが、ホテルのチェックインの時間が迫ってきたので駅の方へと向かう。

 僕がそのホテルに到着したのはチェックインに予定した時刻の十分前だった。

自動ドアをくぐり、恐る恐るフロントに立つホテルマンに近付き、声をかける。


「あの……、十五時に予約していた者なんですけど」


 明らかに挙動不審であろう僕に、ホテルマンはにこやかに微笑みかけた。


「お待ちしておりました。では、お手数ですがこちらの用紙に記入をお願い致します」


 そう言って差し出された用紙に僕は何とか震える手で記名する。

 手に汗握るという表現が、これほどまでにしっくりとくる場面も早々ないだろう。

途中、記入中に保護者の有無を聞かれでもしたらどうしようかと不安を抱いていたが、その後もホテルマンからは何ら聞かれる事なく手続きは進む。

 その後、フロントに置かれたアメニティと朝食サービスについての説明を受け、ルームキーを受け取るとそのまますんなり部屋へと通された。

 部屋に着くなりその場に思わずへたり込んでしまう。


「だ、第一関門なんとか突破した……」