「——え」


 目を覚ますと僕は泣いていた。

頬を伝う涙が何だかとても熱く感じるのは、目が疲れている所為だろうか。

 気付けば昨夜賑わっていたファミレス店内も、客の数がまばらになっていた。

それもそのはずだ。窓際の席から見上げた空はすでに随分と明るく、スマホの液晶に目をやれば時刻はちょうど午前八時を告げていた。

 とは言っても今日は日曜日だ。

 昼時にでもなればまた、客が空いている席をまるで椅子取りゲームでも始まったかの様な勢いで埋め尽くし、途端にごった返すに決まっている。

 ふと手元に視線を落とすと、昨夜あのまま寝落ちてしまったらしい僕の手の中にはボールペンが握られていた。

 そして卓上にはドリンクバーのグラスから吹き出した水滴を含み、端にふやけた跡の残る紙ナプキンが置かれている。

 ミミズが這った様な字が並んでいるそれは、昨夜頭を捻り導き出し、僕が最終的に出した結論を書き記した“回答”だった。

走り書きしたメモの様なそれを拾い上げ、とりあえずジーンズの尻ポケットにしまい握りしめていたボールペンを元の位置に戻す。

 それから朝食をとり、人が多くなる前に店を出た。

 その後、チェックインまでの時間本屋で立ち読みすることで過ごした。

 おそらくこれが人生最後の読書となるのだろう。