スクリーンにはあの日と同じく、僕が母さんの注意を引く為にひたすら「母さん」と呼び続けるシーンが続く。
しかし、その声に反応する母さんの姿はやはりない。そうしてようやく気づく愚かな自分の間抜けな顔がスクリーンに映し出される。
何度も繰り返される悪夢の様なその出来事に、僕の中に黒い感情がふつふつと湧き上がってゆく。
それはまさに憎しみだった。
これ程までに僕は母さんを恨んでいたのかと、自分で自分に驚かされる。
愛情が深ければ深いほど、その反動は凄まじいのだと僕は知ってしまった。
憎しみとは愛情の裏返しだったのかと、何とも扱いづらいこの感情を僕は完全に持て余していた。
どう消化すればこの感情が消えてくれるのか。
僕の命はもうすぐ尽きると言うのに、もしも死後の世界が存在するとして僕はこの醜い感情を抱いたまま、向こう側へは逝きたくないと思った。
せめて今生でこの感情を消化していきたいと、そう強く願う。
誰に、とは言わない。僕はもう神などいない事を知っているから。その証拠に誰も僕に救いの手を差し伸べてなどくれなかったし、乗り越えられる程度の壁では決してなかったからこそ、現にいま僕はここにいるのだ。