しかし、僕には手紙を残したい相手がそもそも居ないし、世間に訴えかけ公表したい事も特別ない為、あえて遺書は書かないという選択をした。
そして最後にいつを“最後の日”とするかだが、僕は初めからその点については決めていた。
決行は二日後の月曜日だ。
と、そのあたりで急激に眠気に襲われた僕はそのまま意識を手放した。
数年ぶりに見た夢には母さんがいた。
それは優しかった頃の大好きな母さんの夢だった。
僕を認め、いつだって支えてくれた母さんが僕は大好きだったのだ。
でも、だからこそ母さんの裏切りが何よりも響いたのかもしれない。
夢の世界はその時点までは僕に幸福感を与えていた。
しかし次の瞬間、突然スクリーンの様なものが切り替わり辺りは途端に暗くなる。
——ここは僕の家だ。いや、今となって僕の居場所などない僕の家だった場所だ。
そして繰り返される悪夢の様なあの日の光景が浮かび上がる。
まさにそれは、トラウマを逆撫でされる様な感覚だった。
そこには僕と母さんの姿が見える。
どうやら今度の夢では、この僕は映画館の観客の様だ。
つまりは蚊帳の外の存在というわけか。