“何者にも怯えずに安らかな夜を過ごす”。
僕はセキュリティシステムが十分完備されたホテルの一室で、上質な眠りを貪ることでそれを叶えることにした。
果たして旅行などしたことのない僕に一人でホテルに宿泊などできるのか不安な点は多々あるが、とりあえず僕はスマホを取り出し、ネット予約可能な駅前のビジネスホテルを予約した。
件(くだん)のビジネスホテルは、現在僕のいるファミレスから徒歩一分圏内の場所に位置しており、明日の十五時にチェックインの予定だ。
朝食サービスを付けるか付けないか悩んだが、普段朝食を食べる僕は来たるべきその日も普段通り食事を取ろうと決めた。
一体、誰が予想できるだろうか。
今自分の横で当たり前の様にホテルの朝食を食べている人間がこれから自殺をしようとしているだなんて。
僕がこの世から消えた後、もしもニュースでそのことが取り上げられたとして、僕と同じ時間帯にそのホテルで食事をとった人は報道陣に囲まれて何を語るのだろうか。
そんな事を一人考えつつ、不慣れながらも何とかホテルの予約を終えた僕は、次に“遺書”について考えを巡らせた。
自殺といえば、遺書のイメージが僕の中にはあった。