時より予期せぬ男の帰宅により、被害に遭うこともあるが、男を避け始めてからと言うものその被害は最小限に抑えることが出来ている。
しかしある時ふと思った。
一体、いつまで僕はこの恐怖と戦い続けなくてはならないのかと。
そして僕は、一体いつまでこんな生活を耐え忍び続けることが出来るのかと。
さらに僕の中の“何か”が崩れる悪夢の様な事件が起きたのは、それから1ヶ月半後の事だった。
男の暴力から逃れる為に、毎週金曜日の夜から日曜日の男が寝静まるまでの間、僕は家に帰らない様になった。
だからこそその異変に気付くのに随分と時間がかかってしまった。
それはテスト期間中のとある昼下がりの出来事だった。
帰宅した僕は、平日の昼下がりならあの男と一切顔を合わせずに自宅で母さんとゆっくりと話ができることに気づき、いつもの勝手口からではなく玄関から慌ただしく家の中に入った。
「……母さん! ……どこ!?」
静まり返った家の中には、僕の声だけが虚しく響く。
リビングの方へと足を向ければ、そこには僕が探していた人物の背中が見えた。
「母さん!!」
「……、」
リビングの扉はいつもドアストッパーで固定されている為、開け放たれている。