「えっと、……肩、貸そうか?……大丈夫?」


 最近になってようやく敬語が外れ、余所余所しさが薄れてきたばかりだ。

 この人は案外、酒に弱いタイプだったのかと一人納得していると、男の口からとんでもない言葉が飛び出した。


「——お前のせいでな、俺はとんだ笑い者だ。お前さえいなけりゃどんなに良かったか」

「……え、」

「俺の気持ちがお前に分かってたまるかよっ、ただでさえお前みたいなお荷物背負わされてるのに……、俺が外でなんて言われてるのか知ってるか?」

「……っ」


 突然胸ぐらを掴みかかられて、意表を突かれた僕は必死にもがいた。

 しかし、びくともしない男の腕は鍛え抜かれている事が素人目にも分かる。

そのゴツゴツとした腕はまさに男らしく逞しいものだった。

 そう言えばこの男、武道経験者であることを以前聞いた気がする。


「前の男の置き土産である古巣で生活している“うつけ者”だぞ!? この惨めさがお前に分かるかっ!?」


 初めに浮かんだ感情は、目の前の男は一体誰なんだという未知という名の恐怖だった。

 その次に襲いかかってきたのは、男の腕が僕の腹を思いっきり殴りつける衝撃だった。

そのまま床へと転がった僕に容赦無く、腹に蹴りを入れ続ける男。