人一人生かすのだって大変なことだろうに、その上子供を養うと言うのはどれ程の負担を強いられるものなのだろうか。
再婚する事で、少なからず経済的な負担も緩和されるのではないかと、子供ながらに思った。
何よりいつか僕が独り立ちした時、母さんを支えてくれる人が側に居てくれたらどんなに安心かと考えたからだ。
その後、母さんからその男との顔合わせを兼ねた食事に誘われ、快諾した。
やはり母さんの選んだ人物がどう言う人間かは知っておきたいし、いずれ会わなくてはならなくなるのだから、その時期は早いに越したことないと思ったのだ。
事前情報として聞かされていたのは、男は母さんが派遣社員として勤める会社の上司で、バツイチだが連れ子はいないということだけ。
その週の土曜日に男に指定された店は、おそらく母さんとの二人暮らしでは到底ご縁のないであろう、見るからに高そうなコース料理を味わえる料亭だった。
その時点で経済力のある人物である事が分かり、これからは何の気兼ねもなく自分の事に母さんがお金を掛けられるのだと心底嬉しかった。
しかしその男との顔合わせ時点で、何だか僕はその男が生理的に受け付けないと感じた。
正直、どうしてこれほどまでにその男を拒否してしまうのか、自分でもその理由が分からなかった。