——金曜日。それは僕が一週間で最も嫌悪する曜日。

 世間は華金だの、プレミアムフライデーだのと騒いでいるが、僕にとって金曜日とは生死を分ける魔の曜日だ。

 事の発端は、母親の再婚がきっかけだった。

 僕の高校入学を機に母さんが突然「会わせたい人がいる」と、口にした。

 思えばあの頃が僕の人生はピークに達していたのかもしれない。母子家庭で貧しくはあったが、母さんと力を合わせて親子二人三脚の生活は僕の人生で最も幸せで温かい家庭を感じられる日々だった。

 病気で父が亡くなり、これまで女手一つで育ててくれた母さんには感謝していたし、今後の母さんの幸せを考えると僕はその母さんの願いを拒むことはしなかった。

いや、拒むことなど出来るはずがない。

 それまで母さんが僕の為に、どれだけ母親であり続けるための努力をしてくれていたのかを思えば思うほど、母さんには頭が上がらなかった。

 若くしてパートナーである父を失った母さんは、僕と言う存在を日々生かす為に相当な無理と我慢を繰り返してきてくれたのだから。

 自分の事に一番お金を掛けたいであろう時期に掛けられず、お洒落の制限が苦痛に感じた事だってあっただろう。

友人との旅行や食事だって行きたかったに決まっている。