翌日も僕は屋上にいた。
僕がこの屋上にやってくるようになって、今日で通算して三日目の朝を迎えた事になる。
四月といっても朝晩はまだ風が冷たく、入学式を待たずに散ってしまった桜がなんだか寂しげに枝を覗かせている。
朝の静まり返った学校は好きだ。
校舎や教室、グラウンドに普段とはどこか違う印象を受けるから。
この景色もようやく今日で見納めになるのだろうかと、期待を胸に屋上の扉を開け放つ。
しかしそこには予想通りと言うべきか、今日もまた先客の姿が確かにあった。
その背中に向かって、声を掛ける事に最早手慣れつつある自分がいる。
「ねえ——、」
と、声を掛けたところ僕を思わず声が喉に詰まる感覚を覚えた。
朝日を浴びた少年の制服のブラウスが微かに透け、黒紫色のまだら模様が肌に浮かび上がっていたからだ。
するとこちら気付き、振り返った少年の儚げな笑みが視界に映る。
「——もしかして君も?」
皆までは言わなくても、僕には彼が何を問うているのかが分かった。
頷くと、彼は「そっか」と寂し気に笑って見せた。
声を張り上げなくとも、よく通る彼のクリアな声が僕に再び問いかける。