「そうだよ。だからもう、こんな事は二度としてはいけないよ。君には帰りを待っていてくれる人がいるのだから」


 胸が張り裂けそうな程のこの痛みは何だろうか。

 言葉とは時に優しさにも、凶器にもなり得る。

 彼にムカついて傷つけるつもりで吐いた言葉だったはずなのに、本当は誰よりも僕自身がその言葉で深手を負っていた。

 孤独を語った少年は決意が固まったのか、自らこちら側へと引き返してきて階段の方へと姿を消した。——そこにはもう俯きがちだった少年の面影などなく、芯の強さすらも感じられた。

 一方、その場に残された僕といえば何だか今日も気乗りしないなと、少年の後を追う様にその場を後にした。


《第二章:孤独な少年 第一節:水曜日fin.》