辛いなら逃げ出したって良いんだよ。と、手を差し伸べることができたなら自殺志願者の数は減らせるだろう。
誰かに気にかけてもらえるだけで救われる人はきっと多いはずだから。
それが自宅でも保健室だとしても、そこがその人にとっての安静の地であれば僕は良いと思う。
そこでぷつりと糸が切れてしまったかの様に、さきほどまでの僕の感情の高ぶりは落ち着きを取り戻す。
いつだって僕の“怒り”は、そう長くは続かない。怒るという行為はとてもエネルギーを使うものだから。
だからこそ、もしも自分のために怒ってくれる人が現れたら、僕はその人を大切にするべきだと心から思う。
だってその人は、きっと自分が困った時に誰よりも親身になって話を聞いてくれる人だと思えるから。
「だけどもし、……どうしても今の環境が辛いというのなら、君は家族との関係が上手くいっているのだから……、いじめられている事を正直に話して転校でもすれば良い」
僕の提案した“転校する”という第3の選択肢は、現状を耐え抜くか、死を選ぶかの極限状態だった彼にとっては目から鱗だったらしい。
「……そっか。別にこの学校に縛られなきゃいけない謂れはないのか」