「信じられるか? 昨日まで普通に話していたはずの——友達だと思ってた奴まである日突然、僕を遠巻きにするんだ」


 苦々しくそう吐き捨てた彼の表情は、どこか虚ろだった。

 誰だって、イジメのターゲットにはなりたくないと思うのは至極当然の事だと思う。

その心理状況が強く働いた結果、学校という集団生活を余儀なくされる場において、いじめを過激化させるきっかけになり得る。

集団心理とは、何と残酷で厄介なものだろうか。


「たった一人でよかった。……たった一人本当の意味での味方が欲しかったんだ」


 名ばかりの友達など要らないと彼は言う。その声は泣いていた。

彼の頰は涙など伝っていないのに、その声は確かに泣いていた。

 だけど、たった一人の味方が居てくれたらと願う彼は本当に独りなのだろうか。

 僕は彼に問うた。


「家族は? 君の味方じゃないの?」


 すると彼は首を横に振り、言ったのだ。


「家族には話していない。話せば心配するに決まってるから。親に心配されるくらいなら死んだ方がマシだ。……誰にも話せないからこそ僕は独りぼっちなんだ」


 そんな彼の言葉を聞き、何だか無性にイラついた。心配してくれる家族が居ながら、何が独りぼっちなのだと。