「幼馴染みかぁ。いいね、仲が良くて楽しそうで。僕も、こっちでも友人を作ろうかなぁ。多分、夏休みもこっちに来ると思うし」

「あ、じゃあ、もし良かったら、私と連絡先を交換しない?」


 私はバッグからスマホを取り出した。
 彼は悪い人ではなさそうだし、それに、また演技について聞きたいと思っていたからちょうどよかった。


「いいの? じゃあ、螢ちゃんはこっちでの演劇仲間だね。また、僕の相手役を引き受けてくれる?」


〝演劇仲間〟


 その響きに、再び胸がざわめき出す。


「うん。星原くんが、私の台詞回しで我慢できるなら」

「僕はそんなに悪いとは思わなかったけど」


 そんなことを話しながら、私と星原くんは、携帯番号とLINEで繋がることができた。


「はい、じゃあ、今から僕たちは友達だね。これからよろしく。僕のことは佳って呼んでよ。友達には名前で呼んでほしいんだ」

「分かった。佳くんって呼ぶね。なんか、自分の名前を言ってるみたいで、変な感じがする」

「あー! くそっ……」


 突然、俊太が何かを誤魔化すような声を上げた。
 いつもはクールぶってるくせに、雷だけは駄目なんだよねぇ。
 そんな俊太を気の毒に思ったのか、佳くんが、自分のバッグの中を探りながら、俊太に声をかけた。


「ねぇ、野田くん、だっけ? 僕のウォークマンを使ってよ。気が紛れるんじゃないかな」

「お、おう。サンキュー……」


 俊太は佳くんの顔をチラリと見ながら応えると、ウォークマンを受け取った。


「ちょっと俊太、なにその態度。もっと愛想よくしたらどうなの?」

「う、うるせぇな。俺は人見知りなんだよ。そんな事、お前は昔から知ってるだろうが。これでも少しは努力してんだぞ」


 そんな俊太の言葉に、佳くんは安心したような様子で口を開いた。


「僕は野田くんを取って食ったりしないけどなぁ。でもまあ、少しずつ仲良くなっていこうよ」


 そう言って、俊太の肩をぽんぽんと軽く叩いた。


「お、おう。俺のことは、俊太でいいぜ?」

「それじゃあ遠慮なく。俊太、今日から君と僕は友達だ」