佳くんが私の正面へ回り込んで、両肩を優しく掴んだ。
 佳くんってこんなに強引な人だっただろうか。

 どうしたらいいのか分からず、私の頭の中はぐるぐると回っている。


「君がこのままずっと下を向いているのなら、僕は下から君の顔を覗いてしま――」

「わ、分かった。分かったから、下から覗くのはやめて」


 ゆっくりと、自分の視線を佳くんの方へ向ける。
 それでも、どうしても彼と目を合わせることが出来ずに、それは宙を彷徨った。


「螢ちゃん、僕のこの気持ちだけは、俊太に負けない自信があるよ」

「う、うん……」

「君が好きだよ」

「うん……」

「今、君を困らせているのなら、ごめんね。でも、我慢できなくなってしまったみたいだ」

「……」

「好きだよ」


 私はもう、彼の言葉に倒れてしまいそうだった。


「もちろん返事は今は要らないよ。夏祭り当日まで待ってるからね」

「どうして、私を……? 私のどこがいいの?」


 佳くんは私なんかのどこに惹かれたのだろう。
 一体、いつから?


「恋に落ちるのに、コレって理由なんてあるのかな? 気が付いたら好きだったっていう方が普通だと思うけれど」


 佳くんは、うーん、と考えてから言葉を続けた。


「そうだなぁ。一緒にいて話していると楽しいし、演劇が好きなところだって合うと思うし……、謙虚なところも好きだよ。それから……」


 佳くんが私の顔に視線を戻した。


「顔もタイプだった。可愛いよ」


 穏やかな笑顔でさらりと言う。
 私の顔に熱が戻る。もう駄目だ、クラクラしてくる。


「佳くんって……」

「うん?」

「王子様みたいだよね」

「そうかな? 言われたことはないけれど」

「そうなの?」

「君の王子様になれたら嬉しいよ。なんてね」


 似合う。
 そういう発言が、凄く様になってしまう。
 他の人が言っていたら、絶対に引くような事を言っているのに。

 華やかで綺麗な人だからだろうなと、一人で納得した。


「佳くん、私、ちゃんと考えるよ。二人の気持ちが分かったから、二人のために、答えを出すから」

「うん、ありがとう。待ってるからね」


 そのとき不意に、携帯の着信音が鳴った。