空がゆっくりと藍色に染まっていき、雨蛙の盛大な大合唱が始まる。

 そろそろ頃合いだろうか。


「そろそろ行ってみるか?」


 雑談が一区切りついたところで、俊太がカーテンの外を覗いて言った。


「そうだね。行こうか」


 今日は三人とも自転車だ。

 私と俊太は自分のもので、佳くんはお祖母ちゃんのものを借りてきたそうだ。

 川辺までは自転車で十五分ほど。

 ただ蛍を見るというだけならば、わざわざ川辺まで行かなくても、田んぼの上を飛んでいるのを見ればいい。

 それでも、川辺の方がたくさん見ることが出来るし、何より、私たちは三人で出かけたかったのだ。

 川辺付近まで来ると、道の端に自転車を停めた。

 そして、懐中電灯を照らしながら川辺まで歩いていく。

 足元は少しぬかるんでいる。

 大小様々な石が転がっていて、非常に歩きづらかった。


「滑るから気を付けて歩けよ。ここまで来たら、すぐそこだから」


 先頭の俊太が、自分の足元を見たまま言った。

 視界にきらきらとしたものが入ってくる。それは少しずつ増えていって――。


「わぁ……」


 思わず声を漏らしたのは佳くんだった。