電車から降りようと足を踏み出したその時にふと、ある日曜日を思い出した。
確か俺はその時、目的地に向かう電車にスキップでもする勢いで乗ったのだ。
誰かに会いに。
まさにその時、俺は浮足立つという言葉を体現する存在と化していた。
気を抜けばビートのきいた歌詞も分からない洋楽が脳内で違法アップロードされ、踊り方も知らないダンスを踊りだしそうになる。そんな幸福へ向かう前のめりな期待を感じたのだ。
誰だか分からない誰かに会いに行く。
それだけならただのデジャヴで済まされるのだが、俺はこの先の筋書きを知っているのだ。
誰かのネタバレを聞いた後に見る映画のようだった。期待のその先の幸福は束の間で、最後には温かなオレンジ色がだんだんと闇に吸い込まれ真っ逆さまに墜落するのを知っているのだ。
気づいてはいながらも俺は、バットエンドへ向かう悲劇の主人公のように歩みを止めなかった。どうせ気のせいだから。
俺は俺なのだから。