見当違いに責めて、俺はすぐに自己嫌悪で顔をしかめる。何様だよ、俺は。病気を百合に知らせるな、なんて俺に口出しはできないだろ。

 でも病気と知ったところで、百合にはどうすることもできない。落ち込ませて、心を乱れさせるだけだ。大学受験だってあったのに。

「どうしてもっと早く、私に言ってくれなかったんだろ……」

 俺の思いとは裏腹に百合はやっぱり自分を責めていた。

 なぁ、百合。そんな顔をするなよ。冷たい言い方かもしれないが、気づいたときには手遅れだったんだろ?

 もっとなにかしてあげられたんじゃないか、とかそういうのはやめろって。ましてやいなくなった後まで。

 もういないやつに対して、ずっと後悔していくつもりか?

 百合はなにも悪くない。百合が自分を責める必要はまったくないんだ。 

 そう伝えたら百合は怒るだろうか、泣くだろうか……それともホッとするのだろうか。

 言いたいことは山ほどあるのに、どれも発せられず心の中で黒い感情が渦巻いていく。

 それを振り払い、考えを巡らせて彼女に伝えたいことを整理する。

「コウタ自身、最後まで百合に心配かけさせたくなかったんじゃないか? あいつそういうとこあっただろ、昔から。……だから、百合が自分を責めんなって」

 この言葉でよかったのか。形のいい眉をハの字にさせ、泣き出しそうな百合に俺は顔を歪める。

 間山孝太。やっぱり俺はお前が大っ嫌いだ。百合にそんな顔をさせるお前が。昔からそうだった。どうして俺じゃないんだよ。

 心の中でほぞを噛む。本当は本人に直接この感情をぶつけてやりたい。百合にどう思われても、この際関係ない。けれど、もう伝えることすらできないんだ。

 本当に腹が立つ。病気になって、そこからはあっという間だった。突然百合の前からいなくなって、どこまで自分勝手なやつなんだよ。