あの言葉に嘘はないんだろ? 中学からサッカーを始めて、もう空手はやってないけど、それは理由にならない。

 男なら約束は守れ。これからもちゃんと百合を守れよ!

 意地っ張りで、素直に泣くやつじゃないから。変な男に引っかかるくらいならお前でいい。

 ……いや、お前じゃないとだめなんだよ、百合は。

 何度お前のことを想っているのか聞かされてきたか。マネージャーの女子と噂になったときもすごく気にしていた。

 普通に話しかけてくるお前に、今更素直になれないと自己嫌悪する愚痴をずっと聞かされてきたんだ。

 お前だって俺が死んで、百合が大丈夫かってずっと気にしていたくせに。

 自分の死後、意識だけになった俺は、百合に気づいてもらえず、渋々間山孝太のところにも行った。

 でもやっぱり間山孝太にも俺の姿は見えなくて、その代わり何度か百合にメールを送ろうとしてやめようとしている姿や、心配して家まで来ようとしていた行動を目の当りにした。

 今日だって偶然装っておいて、百合と話すためだったんだろ? それは百合が友達第一号だからか? 俺とも友達だったからか?

「……そろそろ帰ろうか」

「そうだな」

 俺の心の叫びなど微塵も伝わっておらず、帰る旨を切り出した百合に間山孝太が静かに同意する。

 百合は優しく空を見つめた。

「なんだかんだで、ここまで付き合ってくれてありがとう。きっとコウタも見守ってくれているよね」

 百合、こっちだって。空じゃなくてお前のすぐ隣だ。でも、やはり気づいてもらえない。

 間山孝太に百合が続く形で、ふたりは帰るために階団へと向かう。

 おい! 間山孝太。それでいいのか? 百合とは大学だって違うし、このまま別れたら次に会えるのはいつかわからないぞ! 百合も、いいのか?

 ふたりの間を右往左往するも、間山孝太と百合に会話らしい会話はない。もちろん、こちらに気づく気配も。

『心配しなくても、俺はお前から百合を奪うつもりはないから』

 ふざけんなよ!