明らかに食欲は落ち、比例して体重も落ちていく。俺の異変に百合はすぐに気づいた。それでも、なんとか受験が終わるまでは、と病気の件は黙っていた。

 そして入試を終えた日に百合は俺の容体を知ったらしい。母さんが話したんだ。百合は俺の元へ飛んできた。

『コウタ……病気なんだって……でも、絶対に良くなる。元気になるからね』

 ごめんな。俺はもう自分が長くないってわかっているんだ。しょうがない。こういう運命だったんだよ。だから百合がそんな顔をするなって。

 必死に目で訴えかけるも、百合の表情はつらそうで、泣きそうだ。百合には笑って欲しかった。

 でも、いっそあのとき、思いっきり泣かせてやるべきだったのかもしれない。

 小さい頃に泣き虫と言われるほどたくさん泣いた分、徐々に泣くのが苦手になっていった百合だから。

 でも、もうその心配はいらない。

 ひとしきり泣いた後、百合は指で涙を強引に拭って、顔を上げた。

「ありがとう。ちょっと救われた」

「そっか。なら、よかった」

 微笑む間山孝太に百合はふいっと顔を背け、わざと明るい声で話を振った。

「にしても、驚いた。やっぱりコウタと仲良かったんだ」

 間山孝太は口をぽかんと開け、ややあって気まずそうに頭を掻いた。

「いや、コウタにはかなり嫌われてたけど」

「そんなことないでしょ」

 いや。百合はわかっていない。めちゃくちゃ嫌ってただろ。俺は間山孝太の正面に立つ。

 もう一度言う。間山孝太。俺はお前が大っ嫌いだ!

 たとえ直接お前にもう言えないとしても、この気持ちだけはずっと変わらない。百合に対する想いほどに!

 俺の方が百合と先に知り合ったのに、俺が百合にとっての一番だったのに。お前はそのポジションをあっさり奪っていきやがった。