『なんだか私、最近避けられている気がするんだ』

 百合が間山孝太の件で俺に相談を持ち掛けてきたのは、ちょうど三人で星を見に行った後だった。

 間山孝太になにがあったのかは知らない。俺にも寝耳の水の事態だった。

『私、知らない間になにかして嫌われちゃったのかな?』

 泣きそうになる百合に、『そんなわけない!』という言葉が喉まで出かかった。

 だって俺はついこの間、間山孝太の気持ちを自分の耳でしっかりと聞いた。百合のことが好きだと。

 それを伝えたらすむ話だ。でも、どうしても言えない。

『なんでかな、私。どうしたらいいんだろう』

 幼い頃はしょっちゅう見ていた百合の泣き顔。けれど、それも成長と共に見られなくなった。

 なのに、このときばかりは百合が久々に泣くんじゃないかと思った。それほど間山孝太の態度は百合の気持ちを揺らしていた。

 思考だって珍しく、どんどんマイナスの方向へと陥っていく。

『本人に聞いても『なんでもない』って言うし。私のこと、鬱陶しくなったのかな? それとも、好きな人でもできたのかな?』

 このとき俺はわかったんだ。百合は間山孝太が好きなんだって。今の百合は、親しかった幼馴染みとの友情で悩んでいるわけじゃない。

 片思いに苦しんでいる少女そのものだった。

 ああ、俺じゃなくて、あいつなんだ。俺の方が間山孝太よりも付き合いも長いし、こうして百合の悩みだって聞いてやれる。

 ずっとそばにいたのに。俺じゃだめなんだ。

 悔しくて、切なくて、腹が立って――。

 目の前には落ち込んでいる百合がいるのに、慰める言葉のひとつもかけてやれない。自分のことばかりで、嫌になるがどうしようもない。

 結局、俺は間山孝太の気持ちを聞いていて、そのうえで百合の気持ちも知ったのに、百合にはなにも言えないままだった。もちろん、間山孝太にも。