まだちらほらと遊んでいる子どもの姿があり、みんな元気で笑顔だ。それを見守りつつ世間話に花を咲かせる母親たち。

 鉄棒で懸命に逆上がりの練習をしている小学生親子。スポーツウェアでジョギングやランニングをする大人たち、のんびりと散歩をする老夫婦など多種多様だ。

 それぞれの癒しの場としてこの公園は今も昔も機能している。百合を視線を移すと、じっくりと公園内を眺めていた。百合の目にはなにが映っているのだろう。

 今ある光景だけじゃなくて、記憶の中に想いを馳せている気がした。懐かしさが滲んでいる表情だが、微妙に眉がハの字だ、

 そこでそもそもこの公園に来た目的を思い出す。

「なんで、ここに来ようと思ったんだ? コウタと出会った場所だからか?」

 百合は肯定も否定もしない。口の端をわずかに上げ、笑っているように見えて、泣き出しそうにも見える。百合の目は公園の中に向いたままだ、

「まぁ、ね。馬鹿だと思うかもしれないけど……探してるの、コウタを」

 百合の声がかすかに震える。それに俺は気づかないふりをした。百合はこちらをけっして見ないし、目だって合わせようとはしない。

 懸命に公園の至る所に視線を飛ばしている。その目線はやや上向きだ。なにかを堪えているふうで百合はさらに早口で続ける。

「言ったでしょ? コウタがいなくなったってまだ実感が湧かないって。もしかしたらコウタとの思い出の場所を巡ってたら、ひょっこり会えるかもしれないから」

 馬鹿だろ、百合。そんなことしたって会えないのはわかっているだろ。

 でも、百合はきっと理解しているんだ。現実逃避や本当に会えると夢見て、ここに来たわけじゃない。

 思い出の中でしか会えないコウタを探している、自分の気持ちと向き合うために、ここを訪れ、記憶や気持ちを整理しようとしているんだ。

 それがたとえ辛いことだとしても。