「だってお前、チーズケーキ好きだろ?」
知っていた。百合が喜ぶと思った。だから誘ったんだ。
「……にしても、初めて行ったけど、なかなかよかったな。旨かったし、コーラもあるって俺好みだわ。ただフルーツをつけてくれるのはよかったけど小さくなかったか?」
真正面から告げておいて、ふいっと顔を背けると、白々しく店の感想を述べた。
「あんなもんじゃない?」
百合がさっきの発言に対し、なにか反応するかと思ったが、それには触れずにいつも通りさらっと冷たい返事があった。
でもぶっきらぼうな言い方の反面、百合の表情は嬉しそうに笑みが浮かんでいる。
俺は百合と共に公園へと歩き出す。目的地はもうすぐだ。ついてきたからには、ちゃんと最後まで見届けてやりたい。
通い慣れた高校の方へは進まず、一本手前の道に入る。隣接している小学校と幼稚園の前を通り、懐かしい気持ちになる。ここにも通っていたんだよな。
今は春休みなのでグランド以外は静かなものだった。そして奥の開けた土地に矢野公園はあった。
入口にある『矢野公園』と刻まれた石は、すっかり古びていて正直、字も読めないほどだ。
でも、ここら辺の学校に通う子どもたちにはおなじみの場所で、字が読めない幼稚園児だってここが矢野公園だと知っている。
「あんまり変わらないね、ここ」
公園内を見渡し、百合がしみじみと呟いた。
「そうか? 遊具とか色も新しく塗り直してるし、なくなってるのもあるだろ。あと――」
「そういうことじゃなくて、雰囲気が、ってこと!」
まるでわかっていないという口調だった。物理的な話ではなかったらしい。百合につられ、俺もあちこちに視線を飛ばして公園の中を見る。
知っていた。百合が喜ぶと思った。だから誘ったんだ。
「……にしても、初めて行ったけど、なかなかよかったな。旨かったし、コーラもあるって俺好みだわ。ただフルーツをつけてくれるのはよかったけど小さくなかったか?」
真正面から告げておいて、ふいっと顔を背けると、白々しく店の感想を述べた。
「あんなもんじゃない?」
百合がさっきの発言に対し、なにか反応するかと思ったが、それには触れずにいつも通りさらっと冷たい返事があった。
でもぶっきらぼうな言い方の反面、百合の表情は嬉しそうに笑みが浮かんでいる。
俺は百合と共に公園へと歩き出す。目的地はもうすぐだ。ついてきたからには、ちゃんと最後まで見届けてやりたい。
通い慣れた高校の方へは進まず、一本手前の道に入る。隣接している小学校と幼稚園の前を通り、懐かしい気持ちになる。ここにも通っていたんだよな。
今は春休みなのでグランド以外は静かなものだった。そして奥の開けた土地に矢野公園はあった。
入口にある『矢野公園』と刻まれた石は、すっかり古びていて正直、字も読めないほどだ。
でも、ここら辺の学校に通う子どもたちにはおなじみの場所で、字が読めない幼稚園児だってここが矢野公園だと知っている。
「あんまり変わらないね、ここ」
公園内を見渡し、百合がしみじみと呟いた。
「そうか? 遊具とか色も新しく塗り直してるし、なくなってるのもあるだろ。あと――」
「そういうことじゃなくて、雰囲気が、ってこと!」
まるでわかっていないという口調だった。物理的な話ではなかったらしい。百合につられ、俺もあちこちに視線を飛ばして公園の中を見る。