そんなに時間は経っていないのに展望スペースにつく頃には空の色は一段と白んでいた。

 暗くなる前の一瞬の明るさ。それはまるで朝焼けにも似た景色だ。

 さてお目当ての星でも眺めようと上を見上げれば、百合が少し席をはずす旨を伝えてきた。

 どうやら折り返しの電話らしい。電話を取り、慌てて端の方へと駆けて行った。百合の後ろ姿を確認し、俺は目線を上にしようとした。

 そのとき、なにを思ったのか間山孝太がわざわざ俺の隣に座って来たのだ。たしかにここは段差になっていて腰を下ろせるが、他にもベンチや座れる場所は設けられている。

 どうして、あえての俺の隣なのか。距離もどう考えたって近い。

 何度も言うが、俺は間山孝太のことが嫌いだったし、同じ空間に一緒にいるのさえ嫌だった。

 幼い頃は百合も一緒に遊んだりもしたが、今日だって百合がいるから来ただけで、こいつとふたりにならないですむならなりたくない。

 なにかをされたとかそういう話ではなくて、初めて会ったときからどうも間山孝太は気に食わなかった。

 それは男の直感とでも言うのか、近い未来に百合への想いでぶつかり合うとどこかで直感していたからなのかもしれない。

『俺さ、百合が好きなんだ』

 だから、こうして唐突に間山孝太が百合への想いを告げてきたとき、俺は驚きはしなかった。

 ただ、どうして俺に言うのか理解に苦しむ。わざわざ間山孝太が俺とふたりのときを狙って言ってきたのなら、宣戦布告かもしれない。

 しかし身構えたわりに間山孝太の言い方には闘志などはなく、むしろ顔に笑みさえ浮かべてこちらを見てくるので、俺は逆に毒気を抜かれた。

 それは俺じゃなくて本人に言えよ。そしてさっさとフラれてしまえ。

 すかさず返しそうになり、慌てて口をつぐむ。いや、待て。もしもこいつが百合に気持ちを伝えて、上手くいったらどうするんだ? 俺と百合は今までと同じようにいられるのか?