そこで俺の頭の中で間山孝太から百合への想いを告白されたときの記憶が自動再生される。

 あれはたしか中学の頃、ちょうどこれくらいの季節だったか、春休みに入ってすぐだった。

 突然、間山孝太から百合に連絡が入ったのだ。その内容は『一緒に星座を見よう』というもの。

 当時の理科の授業内容が天文分野だったのもあり、教師が『今の時期なら夕方に冬の大三角を形成しているおおいぬ座のシリウスが肉眼でも十分に綺麗に見える』とかそういう発言をしたのが発端だ。

 馬鹿正直に捉えた間山孝太は、一緒に観ようと百合を誘ってきたのだ。そんなもんひとりで勝手に見ればいいだろ。

 しかし百合が嬉しそうにその話をして俺も誘ってきたものだから、俺は渋々一緒に行くことになった。

 正直、星に興味なんて微塵もなかったし、授業なんかもどうでもいい。でも百合があいつとふたりになるのは、それはそれで複雑で、俺は邪魔してやるくらい気持ちでついていった。

 待ち合わせは定番の矢野公園で、百合の他に現れた俺の姿を見ても間山孝太は嫌な顔ひとつしなかった。

 百合から聞いていたのかもしれないが、俺が逆の立場なら、間違いなくあからさまに落胆と拒否の意を示したと思う。

 なのに、間山孝太は『賑やかになっていいな。せっかくだし一緒に観ようぜ』と爽やかな笑顔を向けてきた。

 あいつのそういう余裕綽々なところも気に入らなかった。

 ライバルだと意識しているのは俺だけみたいで、悔しかった。その一方で、もしかすると間山孝太は別に百合のことを異性として意識しているわけではないのかとも思えた。

 単なる幼馴染み。っても、間山孝太は小学校低学年の頃にこの近くに引っ越してきて、百合と出会ったときの年齢を考えれば、そこまで幼い頃から知っているわけでもない。

 むしろ百合との付き合いなら俺の方が断然、長い。っても、競うところはそこじゃない。