「だって、どちらも付き合ってないって否定してなかったじゃない」

「あれはっ! 最初はいちいち否定してたけど、それでさらに塚本たちがあれこれ言ってくるから、もう鬱陶しくなって相手にしないって決めたんだよ」

 心なしか早口になってしまった言い訳に、百合は完全には納得できていない様子だ。

 なにを必死になっているんだ。全部今更だろ。百合に聞かれないからって、自分から誤解を解こうともしなかった。

 百合はおずおずと尋ねる。

「付き合ってなかったにしても……佐藤さんは、あんたのことが好きだったんじゃない?」

「はぁ? 百合までなにを言うんだよ。そういうのやめろって」

 反射的に本気で怒りがこもった声色に、百合は気まずそうに正面から目線をはずす。

「ごめん」

 百合の謝罪に俺は胸の奥がチリチリと焼けるように痛くなる。ちょっと待て、そもそも百合にこんな話をさせているのは誰なんだよ。

 謝らせてどうする。感情をぶつける相手が違うだろ。

「……俺の方こそ悪かった。でも本当、佐藤とはなんでもねぇから」

「いいよ。もうわかったって」

 百合が苦々しく笑ったタイミングで、先に百合のケーキとドリンクが運ばれてきた。

 俺は百合の方に身を寄せて、皿の中を覗き込む。ケーキに対して皿が大きすぎないか?というのが、まず頭を過ぎった。

「すごいっ! 可愛い。これ、テイクアウトより中で食べた方がお得な感じだね」

 対照的に百合は興奮気味だ。昔から好きなものを前にすると、百合は子どもみたいな反応をする。

 皿の真ん中にケーキがちょこんとのっていて、その周りにイチゴやリンゴ、バナナにキウイなどが散りばめられていた。

 どれも俺が好きな果物ばかりだが、やはり小さすぎじゃないか?