タケシ君の知り合いって人が現れてね、遅れるからって伝言を頼まれたって言うのよ。私は信じなかったよ。だって私たち、遅れるのが前提の待ち合わせなんだもん。
 それってどんな奴だった? 分かっていて聞いてみた。奴だよな。絶対に。
 学生服着たロン毛の人だった。私より細くて、女装したらきっと綺麗だなって感じ。
 間違いなく奴だ。それで、襲われたのか?
 うーん、それがちょっと違うんだよね。いいから来いよって強引には引っ張られたんだけど、私を助けようと必死だったみたい。
 どういうことだ? 俺はてっきり、長髪男がチンピラを使ってだか利用されてだかは分からないがそんな感じでユウキを襲い、俺から金を奪うなりなんなりを考えたと思っていたんだよ。
 ここにいると危険だと言われたのよ。早く逃げるんだってね。私はタケシ君になにがあったのかなって思ったんだけど、その人、それを感じたのか、タケシなら大丈夫だよ。今のところはな。なんて言うのよ。
 けれど奴は間抜けで、その後すぐにチンピラに捕まったってわけだ。ユウキと一緒にな。
 奴はユウキの存在をどこかで知り、俺を脅迫しようかなんて話をチンピラ共に言ったそうだ。冗談のつもりだったようだが、本気にされ、現実になった。奴は流石に慌てたようだ。俺たちをいじめるにしちゃあやりすぎだ。しかもチンピラたちは、ユウキを、俺の口からは言えないほどの酷い目にあわそうとしていたようだからな。
 奴とユウキは、チンピラどもに攫われたんだが、この街には聞き屋がいるだろ? 俺とユウキの関係は知らなくとも、事件を聞きつければ動き出すんだ。まぁ、今回ばかりは感謝している。聞き屋には当然だが、ナオミにもな。
 ナオミだけは、俺とユウキの関係を知っていたんだ。まぁ、転校していったヨシオの彼女伝いだけどな。俺の口からは言っていない。まぁ、目撃はされてもいるんだがな。
 そのナオミは、横浜の街を一人で歩いていたそうなんだ。なにをしていたのかは、教えてくれなかった。もうすぐクリスマスっていう時期だ。ただの買い物だったのかも知れないが、偶然ユウキを目撃したことは嬉しい限りだよ。