教室へと戻る途中で、ナオミとユリちゃんを見かけた。ユリちゃんは俺に笑顔を見せてくれたが、ナオミは仏頂面だった。
 冬休み前最後の日に授業なんてない。俺たちはつまらない校長やらの挨拶を聞かされ、家に帰った。今日は楽しみにしていると、何人もに声をかけられた。全校生徒の半分は来るんじゃないかって噂だったよ。俺たちが手渡したチケットとは別に、自らの手段で購入した奴も多かったと聞いたよ。嬉しいことだよなって、素直に思ったよ。いつかそいつらには別の恩返しをしたいと考えているんだ。
 俺はユウキとの待ち合わせ場所に一人で向かった。ケンジはついて来たがっていたが、当然断ったよ。忙しい一日が始まるんだ。そんな暇はないだろと言ったら、それはタケシも同じなんだけどな。そう言いやがったよ。俺以外の四人は、真っ直ぐチッタへ飛んで行ったんだ。
 昨日はごめんね。先にそう言ったのは俺じゃないんだ。本来なら、俺が言う言葉だって、今では思うよ。
 なにがあったのか、聞いてもいいよな? 俺の言葉に、ユウキは頷いた。
 俺たちはよく行く店に入ったんだ。男の客なんてほとんどいない洒落たカフェだよ。俺はそこが一番落ち着くんだ。なんていうか、心が和む。俺は乙女だって感じるんだよな。
 私ね、昨日はいつもより早く来てたんだよ。珍しくさ、練習が早く終わったんだよね。今日も休みだし。
 翌日から始まる大会に向けての休暇だったようだ。ユウキは女子サッカーで、全国大会に出場をしているんだ。一年の時からレギュラーでな。残念なことに、サッカーを始めたきっかけは俺とは少しも関係がない。中学の先輩に誘われた。それだけだよ。もちろん、女子の先輩にだ。