俺たちの評判が上がると、やはり警察が動き出した。聞き屋が間に入ってはいたが、流石に集まる人数が増え過ぎたんだ。俺たちは、演奏時間を変え、曜日も変え、多くの人に音楽を届けた。確実に、なにかが変わり始めていた。
 流石にもう限界だよな。これじゃあ、桜木町の二の舞だな。お前らはもう、路上じゃ無理だ。どこかいいライヴハウスでも探さないとな。このまま消えていくのは嫌だろ?
 聞き屋がそう言った。けれど俺たちは、どこのライヴハウスでも門前払いだった。横浜市内から飛び出しても、すでに長髪男の息がかかっていたんだ。都内も、全滅だった。
 そんなの小さな箱に限ってだろ? そうだな。思い切って、チッタででもやるか? それともアリーナか?
 あのさ、俺たちは本気で困っているんだよ。ライヴがしたいんだ。この際どこでもいいんだ。
 まぁ任せておけよ。真面目な話、今のお前らならチッタ程度なら簡単に埋まると思うよ。けれどまぁ、金次第だよな。自分たちで宣伝するには限界があるしな。誰かいないのか? 知り合いでそんな仕事をしている奴がさ。
 聞き屋の言葉を聞いて、一人心当たりを思い出したよ。まぁ、あてになるかどうかは怪しかったが、この際だ。頼って損はないよな。
 俺がなんとかしてみるよ。忘れていたんだけど、一人だけいるんだ。直接なんて会ったことはないんだけどな。兄貴の彼女の友達の彼氏だとかいう、とんでもなく遠い関係なんだけど。まぁ、なんとかなるんじゃないか? その話が本当ならな。
 そんな俺の言葉には流石の聞き屋も唖然としていた。まぁ、やれるだけのことはしてみろよ。呆れ顔でそう言われたよ。
 私も一人いるよ。っていうか、みんなも知ってるじゃない。ナオミならきっと力になってくれるわよ。ケイコがそう言った。俺は、それはやめといた方がいい。話がこじれるだけだ。そう言ったよ。その言葉を聞いて、ケンジだけが頷いていた。
 とにかく頑張れよ。俺もまぁ、当てがないってわけじゃないからな。
 俺たちはその後も横浜駅前でのライヴは続けていたが、定期的にとはいかなくなった。週に一度、十日に一度、月に一度、観客が増えるに反比例してどんどんと回数が減っていった。