今年は文化祭に出たいとかは言わないのか? ナオミがなんて言うかは知らないけど、俺が相談してやろうか?
 ナオミは最近、長髪男と付き合っているって噂があるが、俺はそれが嘘だと知っている。長髪男が流している噂に過ぎない。仲良くはしているようだが、ナオミにその気がないのは明らかだった。ナオミはまだ、ケンジを諦めている様子がなかったからな。
 女子の気持ちっていうのはよく分からないって、つくづく思うよ。ナオミは今や、ユリちゃんと大の仲良しだ。どういうわけか、そこにナオミの陰謀は感じられなかった。よくある少女漫画とは違うんだ。それはケイコも保証していた。ケイコも含めて、三人はいつも一緒に行動していたよ。まぁ、ガレージライヴには、いくら誘ってもナオミは姿を見せなかったんだけどな。
  文化祭にはもう、興味はないよ。どうせ体育館でやるんだろ? どうせなら、校庭か屋上っていうのがいいんだけどな。それならきっと、大盛り上がりだ。ここの鍵はお前が持っているんだし、一丁やってみるか? なんて俺の冗談を、長髪男は笑いもせずに聞いていたよ。
 今度さ、俺たちのバンドのライヴがあるんだけどさ、見にくるか? 路上なんかじゃなく、ちゃんとしたライヴハウスだぜ。チケット代まけとくからよ。一度全員で本物を体験するといいぜ。勉強になるからな。
 本気でそう言っていたんだろうな。随分と得意げな表情と口調だったからな。
 まぁ、考えておくよ。そう言って俺は、屋上を出て行く。嫌な奴じゃないんだが、面倒な奴なんだよな。ある意味ではだが、ナオミとお似合いなんだよ。まぁ、あり得ないがな。あくまでも、ある意味では、だなんだよ。