話を聞き終えて、俺はどうすればいいのだろうかと思ったが、答えは簡単なんだよな。どうすることも出来ない。流れに身を任せるだけだ。
 それで彼女へのいじめは終わりか? ちゃんと謝ったのか? っていうか、説明したのかよ!
 俺は少し、怒っていた。彼女が転校するってことは仕方がなくとも、いじめはまだ終わっていないんだ。クラスの奴らはきっと、外で彼女と会えばいじめを続けるんだ。それはきっと、大人になっても続いていく。そんなこともあっただなんていういう思い出に変換をしてな。俺はそれが許せない。
 あの子には謝ったわよ。それじゃあ足りない? いじめをしていたのは私じゃないんだからね。
 けれど、そう仕向けたのはナオミだろ? 今からなら間に合うだろ? 彼女の元に謝りに行かせるか、お前があいつらに謝るんだよ。それくらい出来るだろ?
 うるさいわね・・・・ なんてナオミは言っていたが、なにかを真剣に考えている様子だった。その後ナオミがどうしたのかは聞いていないが、きっと上手くやったことだろうと俺は感じている。ナオミと彼女が楽しく話している姿を、俺は目撃しているからな。
 それでもう一つ聞きたいんだけど、俺たちが文化祭に出るのを止めたのって、ナオミなのか?
 まぁ、そのことはどうでもよかったんだが、気にはなるよな。
 だって、仕方ないじゃない! ケンジ君は私のこと好きだよって言いながら、他の子に夢中になっていたんだから! 許せると思う?
 それでナオミは俺たちが文化祭に出れるかもって話を耳にし、職員室に直行したんだが、ケンジに告白したのはその日の少し前だったそうだ。泣きながら歩いていたんだろうな。目を真っ赤に腫らして。しかも口を真一文字に結んでな。ナオミには、そんな表情がよく似合う。
 ケンジが好きって言った意味は分かっているんだろ? 振られた腹いせにしては、酷いよな。ケンジだけじゃなく、俺や他のみんなにも迷惑をかけてるんだぞ! ひょっとしてだけど、ライヴハウスに出られないのもお前のせいなのか?
 最後のセリフは、冗談として取ってつけたんだが、ナオミは大きく動揺していた。・・・・だって、仕方がないじゃない。震える瞳でそう言った。
 なんだよ、それ? 俺はそう言った。そしてそのときちょうど、終業のベルが鳴り、俺はその場を後にした。