クリスマスの夜に、ケイコの家の地下室でみんなが集まった。いつの間にか、そこが俺たちの溜まり場に変わったんだ。ヨシオの部屋には、行く機会が減っている。
 そこにはユリちゃんは当然として、ナオミの友達も来ていたよ。俺はそこで、最近なにかあったのかと聞いた。ナオミと喧嘩でもしているのか?
 すると彼女は、いつも以上の笑顔を見せて、そんなわけないじゃん! そう言ったんだ。俺はその言葉を信じたよ。
 この頃のユリちゃんは、相変わらずの眼鏡っ娘だったけれど、ケイコたちと一緒に買い物をして買った洋服や、ほんのりとしたメイクをしていて、その輝きを放つ手前っていう感じがしていたよ。下手な表現だが、まさにサナギが蝶になる。そんな直前の瞬間だったんだ。
 俺たち五人は、年末を一緒に過ごす。彼女とユリちゃんにも声をかけたが、家族と一緒に過ごす予定だからと断られたよ。
 今年こそは初ライヴをしたい。五人揃っての願掛けを、近所の神社でした。真夜中にな。配っていた甘酒を飲み、冷えた身体を温めながら。
 年が明けての登校日に、彼女は学校を休んだ。先生は、風邪をひいたと言っていたよ。
 俺は特には心配しなかった。風邪くらい誰ってひくからな。けれど一週間休みが続くと、誰だって心配するのが普通だよな。けれど俺のクラスでは、先生も含めて、誰も心配なんてしなかったんだよ。
 放送部のヨシオは、かなり心配していたな。あの二人は、いつの間にか仲を育んでいた。けれどまだ、そういった関係ではなく、連絡先も家も知らなかった。他の連中にも聞いたが、知っている者はいなかった。
 あの子なら知ってるんじゃないの? なんて一人の女子が答えてくれた。俺がケイコに相談をしているときだ。廊下をすれ違った先輩がそう声をかけてきた。どこかで見たことあるなと思ったら、夏休み前まで長髪男と付き合っていた子だったよ。夏休み明けには別れていたんだけどな。
 あの子って、誰だよ。俺は先輩相手だというのに生意気な口の聞き方をしたんだが、その子はまるで気にしていなかった。
 あのお金持ちの子いるでしょ? ナオミって子。二人は同じ中学だったはずだよ。なんでも有名な私立のお嬢様学校だったらしいんだけど、どうしてこんな高校に来たのかな? 大学まであると思ったんだけど。
 そうなんだ。ありがとうね。俺はそう言い、教室に戻った。二人がずっと以前から友達だったなんて、想像していなかった。ナオミがお嬢様校出身だって噂は聞いていたから、当然この学校で知り合ったと思い込んでいたんだ。