ところでタケシ君の好きな人って誰のなの?
 突然そんなことを聞かれると困るよな。中学の後輩だと、それだけは言っておいたよ。名前なんて言っても分かるはずないしな。あの子は有名人じゃないんだよ。今のところはな。
 とにかくさ、今まで通りってわけにはいかないのか? 最近のナオミの態度、あれは流石にいただけないだろ? 俺だけじゃないぜ。クラス中の男子に嫌われちまう。
 うーん・・・・ どうしたらいいんだろうね。
 そんなの簡単だろ? ナオミがタケシに告白すればいいんだよ。それで振られてお終い。元通りだろ?
 俺はそう言ったが、ケンジのことだから、ありがとうなんて言葉を放ち、ナオミを怒らせちまうんだろうな、きっと。もちろんそんなこと、彼女には話さなかった。
 俺と彼女はちょっと寄り道をして、それぞれの家に帰って行った。どうなるんだろうなって思ったが、どうにもならなかった。ナオミはその態度で俺を避けていたが、それ以外では普通だったよ。まぁ、男子からの人気は減っていたが、それは仕方がない。学校でのあいつは、ちょっとばかし傲慢なんだ。市民に紛れたお嬢様だ。市民との生活にはストレスがかかるんじゃないのか?
 ナオミがどうして俺たちと同じ学校に通っているのか、不思議に感じることもある。確かにこの辺りでは頭のいい学校だが、所詮は公立だよ。私立には立派なお嬢様学校だってあるだろ? って思っていたが、まさかの理由があるのも、人生ってもんだ。