タケシ君が私を誘ったのよ!
 そうだった。俺が彼女を誘ったんだ。
 きっと、ナオミのことでしょ?
 そうだ。ナオミのことを聞きたかったんだ。ケンジとの間に、いったいなにがあったんだ? 俺の知らないことが多過ぎた。
 ケンジ君に好きな人がいるのって、ずっと前から知ってたの?
 彼女の言葉に、俺は頷いた。
 いつから? ナオミとデートする前から?
 なんだかおかしな感じがしたよ。聞きたいことがあったのは、俺のはずだったんだ。
 俺が知ったのは、入学して一週間後くらいだな。あいつは初日に惚れたって言ってたけれど。
 本当に? なんて彼女は驚きの声色でそう言った。
 ケンジのことだから、特別隠してたりはしていないはずだろ? あいつの感情は常に溢れている。
 けど・・・・ なんだか彼女は困った表情を浮かべていた。
 学校のみんなは、単純にちょっとクラスで浮いている子に優しくしているってだけだと思っていた。最初はな。あいつはいい奴ですキャラを自然と身に纏っている。だからなのか、勘違いされることも多いよ。けれど、ケンジのユリちゃんに対する態度は特別だった。そこに恋愛感情があることは誰の目から見ても、次第にではあるが明らかないなっていったんだよ。
 初めてのデートは七月の頭だったんじゃないかと記憶している。最後のデートは夏休み中だったしな。俺の見た感じではあるが、すでにケンジがユリちゃんを好きだってことはバレバレだったはずだ。少なくとも同じクラスの奴らは気がついていたはずだよ。
 好きな子がいるならさ、ちゃんと言いなさいよね! 少しの間をおき、彼女がそう言った。なんだか今度は怒っているように感じられたよ。
 あのさ、デートって言ってもさ、友達同士のデートだろ? 俺にだって好きな子はいるしさ、お前にだっているんじゃねぇかよ。なにも悪いことはしていないだろ? そんなことでナオミは怒っているのか?
 それは・・・・ なんて彼女は口ごもった。