じゃじゃーん! なんて効果音を口に出し、ポケットから取り出した鍵を俺の目の前に差し出した。
 こいつさえあれば、いつでも屋上に行けるってもんだ。けれど絶対に鍵をかけ忘れちゃいけない。たまにだが、見回りをしているからな。今は忘れちまっていたが、外に出たら外から鍵を閉めるんだ。バレたら俺のオアシスがなくなっちまう。
 有り難いね。俺にその鍵をくれるってわけか?
 俺はその鍵へと、手を伸ばした。一瞬だが、長髪男が女神に見えたよ。
 誰がやるかよ。こいつはな、生徒側が持つ、たった一つの大事な鍵なんだよ。使いたかったら俺のところに来いよ。そしたらいつでも貸してやるよ。
 そいつは嬉しいね。そのときはよろしく頼むよ。俺は素直にそう言った。
 こいつをどこで手に入れたとか、そういうことには興味ないのか?
 全くないってわけではないけどな。どうせ教えてはくれないんだろ?
 長髪男は、中から鍵をかけながら、ニヤついていた。本当は誰かに話したくて仕方がなかったんだよ。後で知ったことなんだが、長髪男はケンジにもその鍵のことは内緒にしていた。俺だけだったんだよ。俺にだけ、あいつは鍵を見せ、語ったんだ。お陰で午後の授業は遅刻したんだけどな。
 まぁ、座れよ。あいつは階段に腰を下ろし、俺を見上げた。ポケットからタバコを出そうとしたが、流石にここではまずいよな。そう呟きながら手を引いた。いちいちと態度が面倒くさい奴だと思ったが、あいつはそういう奴なんだ。自然体の動きができない。なにをしても芝居染みてしまう。オリジナリティのない三文芝居のようなんだ。三文も貰ええるなんて凄いよなって思うのは俺だけか? たったの一文でも、貰えるだけ嬉しいけれどな。世の中には自ら金を払って芝居をする奴らがゴロゴロといるんだから。