ナオミはなんでケンジのことが好きなんだ? 見た目か? 態度か? 話したことすらないだろ?
 なんでだろうね? ケンジ君、人気者だから、ただのミーハーだったりしてね。
 なんだよ、ミーハーって。自分の友達のことをそんな風に言うなんて、やっぱり面白い子だよな。
 とにかくさ、私たちはいつでもいいから、予定が決まったら教えてね。デートなんだから、二人がエスコートするのよ。その友達はそう言い残し、階段を駆け下りた。
 さて、困ったな。俺はなんとなく、そう呟いた。すると、鍵がかっているはずの屋上へと出るドアが、カチャッと音を鳴らしたんだ。外側に誰かがいる。曇りガラスに人影が見えた。
 モテモテじゃんかよ。羨ましい限りだな。ドアが開き、そんな声が聞こえたよ。
 誰だって思い、一瞬身構えた。悪意の感じる声だったからな。大勢いたら、逃げるしかないなと考えていたんだ。しかし一人なら、相手をしてもいいって思っていたよ。
 お前の彼女か? なかなかお似合いじゃねぇかよ。キスしてたのか? なんてことを言っていたが、嫌味なのか本気なのか、判断に困ったよ。
 なんだ? 羨ましいのか? 俺は一応、そう返事をした。
 長髪男。屋上から出て来たのはそいつ一人だった。こんな所でなにやってたんだよ。
 空を感じていたんだ。気持ちいいんだぜ。さらっとそう言い退けたが、胡散臭さ満載だったよ。
 どうせ嘘だろって思い、外に出た。他にも絶対に誰かがいるはずだってね。参ったよ。本当に誰もいなかった。
 長髪男は、俺と一緒に再び屋上に出ると、ポケットから取り出したタバコに火をつけた。
 ケンジとバンド組むんだって? ずりぃよな。俺も混ぜてくれないか? なんてな、冗談だよ。一度ケンジに断られているからな。それにしてもさ、お前たち仲よすぎだろ? いっつも五人で登校してるんだろ? いい加減、飽きないのか? 保育園からの付き合いなんだってな。
 面倒な奴だって思ったよ。そんなこと、どうでもいいだろって思っていたら、思わずそのままを口にしていた。