彼女の名前はユリ。確かに可愛い顔をしていたよ。けれどな、髪型とメガネのせいで損をしている。服装もだな。まぁ、それを損と呼ぶのかどうかはそいつ次第であって、男にモテるのが女の全てじゃない。けれど大抵の女子高生は、見た目にこだわるもんなんだよ。ケイコやカナエだって、それなりのおしゃれはしている。ユリちゃんも最近は、少しのおしゃれをするようにはなっている。けれどまだまだだよな。喋ると楽しいんだし、顔も可愛いんだ。普段からもっと自分らしい表情をすればいいのにって思うよ。格好につても同じだ。いまだに親が用意した服しか着ないそうだからな。
 ケンジはまだ、告白をしていない。けれど想いは伝わっているはずだ。ユリちゃんだけでなく、学校中が知っているよ。先生も含めてな。
 俺たちにはリリーっていう曲がある。分かるだろ? 英語でリリーは百合の花だ。ケンジは意外と、詩的な表現をするんだよ。
 女子から人気が高いっていうのは、ときには罪なんだよな。ケンジのことを好きだって女子が、ユリちゃんをいじめるんだ。ケンジのことがそんなに好きではなくても、どうしてあの子がって思うんだろうな。もちろん俺は、そんな現場に居合わせればユリちゃんを守るよ。けれどまぁ、女子っていうのは陰湿なんだ。表立ってはいい顔をする。許せないよな。
 俺のクラスには、見た目だけならテレビで見かける女優よりも綺麗なんじゃないかって女子がいる。正直俺も、最初は好きだった。勘違いはするなよ。俺には想いを寄せている人がいるんだ。好きっていうのは、単純に見た目だけを言っているんだよ。甘い果物が好きなのと一緒で、綺麗な女子が好きなんだ。まぁ俺の場合、甘い果物には手を出しても、綺麗なだけの女子には手を出さないんだけれどな。
 その子の名前はナオミだ。いい名前なんだが、俺にとってはイメージが悪い。兄貴の彼女が同じナオミって名前なんだよ。ちょっと大柄なんだけど、それは体型だけじゃないんだよな。性格も態度も見た目も全てが大柄なんだよ。もちろん兄貴の彼女だ。嫌な奴じゃないし、どちらかといえば好きだよ。けれどまぁ、その名前を聞くとあいつの顔が浮かんでしまう。俺は今でもあいつには文句ばかり言われるんだよ。髪を切れとか、服装がだらしないとか、親戚のおばちゃんかっていうんだよ。まぁそんなあいつも、俺がこの高校に受かったと知ったときには驚き、素直に喜んでいたよ。悪い奴じゃないんだ。
 同級生のナオミもそうだ。根っこはきっと、悪い奴じゃないんだよ。あんだけ綺麗な顔してりゃ、短い人生とはいえ、相当いい思いをしてきたはずだからな。しかも家は大金持ちだ。多少心が捻くれるのも当然だよな。俺のように見た目も環境もそれなりって奴は、心は案外に綺麗だったりするんだ。