「誓い……?」
「そう。ずっと一緒にいる誓い。私が那由多を消えさせない。那由多は頑張れる。那由多と私は、もっと多くの時間を過ごせる。――そのための誓いを。那由多が死神でなくなっても消えない枷を重く作る。絶対に千切れない繋がりを結んで、それで、那由多は、私とずっと……っ」
「清香」
「っ、私も、頑張るからっ。お願い、私と……っ」
「清香、もういいから」
「やだ。那由多が頷いてくれるまではやだっ」
「わかったからっ。嫌なわけないだろっ。これ以上喋ると辛いだろうから黙れ」
「……」
「……悪い。黙れなんて……」
「那由多の口が悪いのなんて、初めからじゃない」
「ああ――そうだったな」
それはいったい何の誓いなのか……ただもっと、ふたりで未来を生きたかったんだ。それが出来るのならどんな形でも。
「ねえ、那由多。私、あそこで誓いをたてたい」
私はベッドで仰向けのまま窓の外を指差す。外の景色なんて夜空しか見えやしない。上げた腕が少し震えているのが悔しい。窓辺に立って、その場所を那由多に教えたかったのに。
見えなくても分かるその方向を指差す。いつか、"ずっと"を願う人が出来て、相手も同じ気持ちでいてくれたのなら、誓うのはここがいいと思っていた場所。
「あそこは……」
「大丈夫よ。神様なんて死神よりきっと寛容だから、那由多は弾き飛ばされなんかしないから」
私が行きたい場所は教会で、背の高い細長い建物は、この病院からも眺めることが出来ていた。その前を通るとたまに、綺麗で幸せそうな花嫁さんがドレスを着てブーケを投げている瞬間に遭遇した。
まだまだ大人でない幼稚な私たちの誓いなど、あそこに適しているかはわからないけれど、今の私たちの最大限の想いは確かにここにあるのだから、那由多と一緒に誓いたかった。
「三日後に、約束ね?」
「頼む。無理はしないでくれ」
「うん。それまでに、もう少し元気になっておくわ。――那由多もね」
「ああ」
おやすみと、うつらうつらし始めた私の瞼に那由多が手のひらを優しく落としていく。驚くほどに冷たい那由多の手に、私は愛おしさが募る。
募って募って、想いに埋もれてしまうように眠りについた。