「確かに人より優れているものを、才能を呼ぶのだと思いますが、だけどあくまで人間が持っているものだ。失敗だってするし、スランプの時だってあるよ。」

父さんの表情は、変わらなかった。

「少し成績が落ちたからって、手のひらを返すなんて。その人のいいところは、才能だけじゃないだろう。」

父は椅子をくるっと回し、僕に背中を向けた。

「父さん!」

「祐輔。」

父さんはやっと、口を開いた。

「お前の言う通り、人間の魅力は才能だけじゃない。だけどな。」

その時の父さんは、全く知らない人のように、思えた。

「それを売りにして、生徒を集めている以上、才能が落ちた者に構っている暇はないんだ。」

最もらしい意見だ。

「お前もいずれ私の跡を継いで、この学園の経営者になるんだったら、頭の片隅にいれておくんだ。」

そして父は、優しい声で言った。

「ビジネスとは綺麗ごとではないんだよ。」