「どうして……」

「え?」

「どうして父さんなんかと……」

それが無性に、悲しかった。

「好きだったのに……先生の事、好きだったのに。」

「祐輔君……」


先生は俺の頭に手を伸ばすと、ゆっくりと、頭の後ろを撫でてくれた。

何度も何度も。

「だけどもう、終わってしまったのよ。」

「終わった?」

「あなたのお父さんに、私は絵描きの才能がないと言われてしまった。」

先生の言葉は、俺の頭の中を真っ白にした。

「才能が無くなった人間は、捨てられるだけなのよ。」

先生が、涙を零しているのが分かった。


そして俺は知った。

母が、奈々瀬が、想が。

いつも抱いている、不安の正体が何なのか。


そして俺は、父を憎んだ。

何を考えて、この学校を作ったのか、僕は知らない。

けれど、人をこんなにも追い詰めて、不安にさせるなんて。

そんな才能だったら、俺はいらない。

そんなのは、本当の幸せじゃない!