「あれ?先生、そのブレスレット……」

先生はハッとして、破片を拾うのを止め、左手でそのブレスレットを隠した。

少しの間しか見ていないが、そのブレスレットは有名なブランドのモノだったと思う。

そして、僕はそれを、どこかで見たことがあった。


どこだろう。

どこで見たんだろう。

拾いながら考え、考えては拾った。

ふと立ち上がって、棚を見た時だった。

そのブレスレットをどこで見たのか、僕は思い出したんだ。

自分の家。

父の書斎だった。

「先生、」

「ん?」

「そのブレスレット、誰かにもらったんですか?」

「……そうよ。どうして?」

「僕の父も、同じ物を持っているから。」

先生は僕の言葉に、表情が固まった。

「父親?」

そして一歩また一歩、先生は後ろへと、下がって行った。