「僕、絵を描くの好きだし、両親が亡くなって行くあてがないからここに来たけれど、来たからには学長の為にも認められるような画家になりたいと思うよ。」

ヤツが急に大人びて見えた。

「それに僕みたいな身寄りのないヤツは、認められなければ捨てられるだけさ。」

そんな事あるわけがない。

そう言おうとしても、口から出て来なかった。

「みんな学長の息子とは、立場が違うんだよ。」

「知ってたのか?」

ヤツは静かに、うなづいた。

「いつ知った?」

「いつって、みんなが話しているのを、聞いただけだよ。はっきり言われたわけじゃない。」

そうか。

ヤツは僕が学長の息子だと、知った後も、変わらずに接してくれたのか。

「祐輔……」

「なに?」

「お前が学長の息子だって事は、正直どうでもいいんだ。」

「はあ?」