“天才児現る“と世間が騒ぐ中。

俺は早く母親の喜ぶ顔を見たくて、一目散にトロフィー片手に母に駆け寄った。

その時の母の顔は忘れない。

抱きついた母の顔は、もう母親の顔ではなかった。


「祐輔?」

奈々瀬の声で、現実に戻った。

「ごめん、もう寝るから。」

僕はその場から、逃げるように離れた。

昔の事を忘れるように。