「うそだよ……」

「うそじゃないって。」

「祐輔、先生の事が好きなの?」


好き?

俺は、奈々瀬のその言葉で、自分の気持ちを知った。


「そんなんじゃ……」

「気付いてないだけ。祐輔は先生の事、好きなのよ。」

「どうして、そんな事思うの?」

「祐輔が先生に、本当の自分を見せているからよ。」

本当の自分?

「祐輔は、いつも本当の自分を隠してる。ねえ、どうして隠してるの?隠さなきゃいけない理由でもあるの?」

隠さなきゃいけない理由。

それを聞いた時、俺の中で幼い時の記憶が蘇った。

ピアニストの母親に、音楽を習っていた頃。

幼稚園の俺は何より、母親が喜ぶ顔が好きだった、

そして小学校に入った時の、ピアノの演奏会。

初出場の俺は、優勝してしまった。