その日も僕は、時間を見つけては、美術室へと足を運んだ。

いつも笑顔の先生は、その日だけ違っていた。

「先生?」

先生は、倒れこむようにして座っていた。

「あ、祐輔君か……。」

何事もなかったかのように、先生は立ち上がった。


「ごめんごめん。」

先生は、やっぱり大人だった。

振り向いた先生は、いつもの僕が知っている先生だ。

何があったんですか?

この前の絵の事?

それとも彼氏と喧嘩?

聞きたいけれど聞けない。

けれど、今の先生を何とかしてあげたい。


「先生、」

「なあに?」

「美術室って空けられますか?」

「え?どういう事?」

「付いてきて欲しいところがあるんです。」

「鍵をかければ、大丈夫だと思うけれど……」

「じゃあ、行きましょう。」

僕は先生の手を取り、美術室を後にした。