先生は絵を描いていた。

「へえ、学校の景色も絵にすると、こんな感じになるんだ。」

「そうよ。見る目が変わるでしょ?」

先生は同じところを、何度も何度も塗り直していた。

「どこかに出す絵ですか?」

「うん……」

「コンテスト?」

先生は笑って言った。

「違うの。これが私の本業なのよ。」

「本業って?」

「画家なの。だけどそれだけじゃ食べていけないから、学長に頼んで講師の仕事もらったの。」

色をキャンバスにのせる手つき。

ずっと、その手を見続けたかった。

「売れればいいんだけど。」

「絶対売れますよ。」

「ありがとう。祐輔君にそう言ってもらえると、本当に売れそうな気がしてきたわ。」

そう言って先生は、また絵を描く事に、没頭した。