状況がわからず黙っていると、険しい顔をした警備員が私に向き直った。
「すいません。この大学の生徒さんですか?」
警備員に尋ねられ、慌ててバックの中から学生証を取り出す。
警備員は私の学生証を見ると、険しい顔を少し緩めた。
「実は弟さんが他の学生の後をついて図書館に入館しようとしたという報告を受けまして、注意をしていたところなんです。
付き添いの入館は可能ですが、申請が必要ですので」
警備員が呆れたように話している。
私の隣に立つ彼を見ると、少し気まずそうな顔をしていた。
「そうだったんですか……。すみません」
「これからは気を付けてください」
そう言って警備員は速やかに去っていった。
私は優人と顔を見合わせる。
「昨日はオープンキャンパスだったから学生じゃなくても自由に入れたけれど、大学自体、本当だったら入るのに申請が必要なんだ」
そう説明すると、優人は「うん、それは知っていたんだけど……」と、しょげたように肩を下げた。
「じゃあ、どうして」
「文乃さんが中にいるかなって思ってつい……」
「え?」
「文乃さんに会いたかったんだ」
優人が子犬のような目で真っ直ぐに私を見てそう言ったから、ドキリとした。
