大学に着くと、周囲は昨日の騒がしさが嘘のようにひっそりとしていた。
ほっとして肩の力が抜ける。
すんなりと胸の中に空気が入ってきて、やっと呼吸が自然にできる。
研究やサークル活動などの用事がない限り、夏休みに好んで大学に来る生徒はそうそういない。
オープンキャンパスの片付けも昨日のうちに終わったらしく、構内は私が望む静寂そのものだった。
気分よく図書館の前まで来ると、私は驚いたのと同時に、小さく喜びで飛び上がった。
探していた姿をみつけたからだ。
篠崎さんは大学の警備員と何やら話しているようだった。
何かあったのだろうかと走り寄って声をかけると、彼が振り向いて「お姉ちゃん!」と声を上げた。
「もう! お姉ちゃんが忘れ物するから届けにきたんだ。それなのに、中に入れなくて困っちゃって……」
昨日の大人びた雰囲気とは一転して、彼は幼さを含みながら目を大きく見開いた。
それにしても私がお姉ちゃんって、何を言っているんだろう。
