僕は君と、本の世界で恋をした。

菜穂から解放されてすぐ図書館まで戻ってみたけれど、すでに閉館してしまっていた。

帰る道すがら辺りを見回してみたけれど、彼の姿は結局見当たらなかった。

私は帰りの電車に揺られながら、彼のことをずっと考えていた。

私にその本の世界を一緒に辿ってほしいと言ったのに、なぜ急にいなくなってしまったんだろう。

本当にあの世界に描かれた場所に行けるんだと思ったら嬉しくなった。

そしてその場所で彼と彼女が過ごしている様子を想像すると、真昼の陽だまりの中にいるみたいに、心が自然と温かくなる。

彼女と私が似ていると、彼は言っていた。

彼女の死を受け入れていると言ったけれど、似ている私と一緒にいることがやはり悲しくなってしまったんだろうか。

彼女のことを考えると胸が痛んだけれど、私は彼と一緒にあの本の世界を辿ってみたいという気持ちも芽生えていたから、それを思うと複雑な気持ちにもなった。