僕は君と、本の世界で恋をした。

「……それならもう、本で客を呼ぶということ自体、止めた方がいいんじゃないですか?」

私は漠然と浮かんでいた案を控えめに口に出してみる。

すると、ひとりは「はぁ」とため息をついて、もうひとりは「それじゃあ、元も子もないじゃない」と言った。

「あの、いや、集客をしないということじゃなくて、本を売りにして客を呼び込むのでなく、他の方法で客を収集して、本を提供する形の方がいいということで……」

私が小声で説明を付け加えると、菜穂がなるほどと頷いた。

「本に興味がない人は本という言葉を出したら、イベントに見向きもしないかもしれない。だけど何か別の目的で誘ってみて、ついでに本もあったから手に取ってみようっていう流れに持っていくっていう事ね」

「うん……、まあ」

菜穂が理解してくれて、ふたりの批判を遮ってくれたから、私は少しほっとした。

「だけど本に興味ない人は、来たところで結局、本を手に取らないんじゃない?」

「それに本が好きな客は逃しちゃうことになると思うんだけど……」

それでもふたりはまだ納得できない様子でぶつぶつ言っていた。
部外者である私の意見など受け入れたくないといった空気も感じる。

「そこはまた次の段階として、別の手を考える必要があるとは思うんですが……」とおずおず言い返すと、また部室が静かになってしまった。

「分かった!」

菜穂が突然声をあげて、テーブルから立ち上がった。